
世界中で失明の主要原因となっている糖尿病網膜症。アイケアソリューションは、その早期発見をサポートする、人工知能(AI)による診断支援システムの開発を、Verily Life Sciences LLC (Verily社※、旧Google Life Sciences)と共同で進めています。その取り組みを紹介します。
- ※Verily社:最新の科学技術を活用し、健康と生命科学に関する重要課題の解決をテーマとする。
早期発見が重要な糖尿病網膜症
糖尿病の合併症である糖尿病網膜症は、多くの人が視力を失う原因の一つとなっています。網膜は眼底※に広がっている薄い膜状の組織で、神経細胞で光や色を感じ、それらを脳に伝える役割を果たしています。その網膜が障害されて視力が低下し、最終的には失明にいたるのが糖尿病網膜症です。しかし、この疾患は、早期に発見して、適切に対処すれば進行を抑えることができます。
- ※眼底:眼球内の底(奥)にある組織全体の名称。

超広角の網膜画像から初期段階の症状を診断
糖尿病網膜症は、初期段階で障害を見つけるのが難しい疾患ですが、眼底画像を読影※1する医師をサポートできるソリューションがあれば、早期発見の機会を高められる可能性があります。Verily社との共同開発プロジェクトでは、糖尿病網膜症の兆候が現れやすい、眼底の周辺部まで撮影できる、超広角走査型レーザー検眼鏡※2で撮った網膜画像を世界中の医療機関から収集し、厳格な基準に沿って複数の専門医が進行段階を読影。専門医の診断データと、その元になった画像をAIに機械学習させ、これによって糖尿病網膜症の診断をサポートします。画像認識はAIの得意分野のひとつであり、今回学習させる網膜画像の枚数は、13万枚を予定(2017年9月現在)しています。
- ※1読影:検査画像から診療上の所見を得ること。
- ※2超広角走査型レーザー検眼鏡:ニコングループOptos社の製品。 200度の画角で眼底周辺部までの網膜画像を一度に捉えることが可能。
さまざまな疾患の早期発見を目指して
現在進行中の共同開発は糖尿病網膜症の早期発見を対象としていますが、いずれは眼疾患だけでなく、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病、アルツハイマー病、血液疾患など、さまざまな全身疾患の発見に貢献することを目指しています。たとえば将来、会社などで行われる定期健康診断で眼底画像の撮影が一般的になれば、さまざまな疾患を早期発見できるようになるかもしれません。
ニコンはこれからも、より多くの人々の健康に貢献するソリューションの開発を進めていきます。

網膜画像から発見できる可能性のある疾患例その他
- 1:WWP
- 2:網膜色素変性
- 3:網脈絡膜萎縮
- 4:網膜剥離
- 5:先天性網膜色素上皮肥厚
- 6:馬蹄形(網膜)裂孔
- 7:脈絡膜母斑
- 8:静脈
- 9:硝子体混濁
- 10:綿花状白斑
- 11:動脈
- 12:網膜新生血管
- 13:網膜円孔
- 14:血管腫
- 15:黄斑
- 16:視神経乳頭
- 17:滲出斑
- 18:色素沈着
- 19:ドルーゼン
- 20:周辺部繊維瘢痕
- 21:網膜出血
- 22:動脈(コレステロール)塞栓
- 23:輪状白斑
- 24:脈絡膜悪性黒色腫
- 25:網膜変性
- 26:白鞘化血管
- 27:星状硝子体症
- 28:硝子体出血
- 29:網膜分離症