2024年8月29日

株式会社ニコン(以下、ニコン)は、創薬の研究開発をさらに加速させる、ECLIPSE Ji用ソフトウェアのアップデート(NIS-Elements ver.6.10以降対応)を開発し、子会社の株式会社ニコンソリューションズより8月30日より順次提供開始いたします。
近年、創薬の研究・開発の現場においては、実験効率の向上や操作の簡素化、拡張性の向上、高速スクリーニング機能などが求められています。特にがんや神経疾患の基礎研究や薬剤評価には幅広い実験系が必要とされています。
2023年9月に発売したスマートイメージングシステム「ECLIPSE Ji」は、発売時に9種類のアッセイ※1を搭載、同12月には4種類のアッセイを追加するなどニーズに応じた豊富なアッセイを提供してきました。
今回のアップデートではがん、神経疾患、再生医療分野などに対応する3種類の新しいアッセイを追加し、さらに既存アッセイの一部においてタイムラプス撮像機能、経時変化グラフ表示などの機能が追加され、より高精度なデータ解析を実現します。
これにより、創薬の研究・開発を行う研究機関・企業・団体が、がんや神経疾患、再生医療などの新規創薬モダリティにおける創薬研究において、複雑な実験データを効率的に取得・解析でき、創薬プロセスの効率化と精度向上が期待されます。
ニコンでは、これからも創薬研究・開発ニーズに応えるため、顧客ニーズを貪欲に取り込みながら優れた光学技術を生かした製品開発を進め、疾患の解明や新薬開発の加速に貢献するソリューションを提案し続けてまいります。
- ※1培養細胞などの生物材料を用いて、機能的な活性や反応を評価する実験系のこと。
発売概要
製品バージョン | ECLIPSE Ji用ソフトウェア 『NIS-Elements ver.6.10』 |
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発売日 | 2024年8月30日 |
主なアップデート事項 |
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主なアップデートの特長
ECLIPSE Jiは、簡単な操作で高精度な解析を実現するスマートイメージングシステムです。撮影サンプルを装置にセットし、操作画面の指示に従うだけで、撮影条件の最適化から撮影、解析、データ表示、レポート作成までを自動で行うことが可能です。今回のアップデートでは既存の13アッセイに加え、新たに3アッセイを追加し、がん、神経疾患や再生医療分野の更なる貢献を目指します。本アッセイは解析プログラムのカスタムが可能なJOBS GA3でも実行可能で、お客様の多様なサンプルに対応します。
1. がん細胞増殖のメカニズム解明や薬剤選択に貢献する2種類のアッセイを追加
細胞周期アッセイは、高い増殖能力を持つがん細胞の研究で需要が高いです。細胞周期に応じて色が変わる蛍光タンパク質を使用し、自動解析で各細胞の周期段階を可視化し、薬剤の影響を評価します。
また、創傷治癒アッセイは、がん細胞の浸潤研究における炎症部位の治癒研究などにご利用いただけます。

右図:創傷治癒解析アッセイの結果例(青:細胞領域・赤:ギャップ領域・黄色:細胞増殖確認された領域)
2. 神経疾患の研究に重要な神経細胞の形態解析をサポートする新アッセイを追加
神経細胞は特徴的な形態を示し、その構造と機能が密接に関係しています。神経突起解析アッセイでは、神経細胞の長さや突起の数などを自動解析する機能を有し、神経細胞の形態における薬剤の影響を調査することができます。これにより、神経疾患や再生医療の研究が大幅に進展することが期待されます。

3. 生体環境の模倣に重要なタイムラプス解析に対応
生体内に近い条件での研究をサポートするために、生きた細胞の経時的な変化を観察するタイムラプス機能を新たに追加しました。これにより、細胞形態の変化や細胞内ダメージの進行を詳細に解析できます。例えば細胞数を計測する“Cell Counting”アッセイでは、細胞増殖の様子を経時的に測定することが可能です。さらに、経時変化の解析結果を視覚的に評価しやすくするための新しいグラフ表示機能も強化され、より複雑な研究をサポートします。

【ニコン 常務執行役員 ヘルスケア事業部長 山口達也のコメント】
ニコンは最先端の技術を追求し、科学技術の発展に貢献するべく、ECLIPSE Ji用ソフトウェアの最新バージョン「NIS-Elements ver.6.10」をリリースいたしました。今回のアップデートでは、特にバイオテクノロジー企業や創薬研究を行う研究機関・企業・団体の実験効率を大幅に向上させることを目指しており、ユーザーフレンドリーな操作性と高精度な解析機能を兼ね備えております。
具体的には、がんや神経疾患、再生医療の分野での創薬研究をサポートするために、細胞分裂解析、創傷治癒解析、神経突起解析の3つのアッセイを新たに追加しました。研究者が複雑な実験データを効率的に取得し解析できるようになり、創薬プロセスの効率化と精度の向上に寄与します。さらに、生きた細胞の経時的な変化を観察するためのタイムラプス解析機能も新たに搭載しました。この機能により、細胞形態の変化や細胞内ダメージの進行を詳細に解析することが可能となり、研究者はより生体に近い条件での研究を実施できます。経時変化の解析結果を視覚的に評価しやすくなり、研究の質が一層向上することでしょう。
ニコンは、常に進化する創薬現場のニーズに応えながら、製品開発を進めています。そして、研究者や医療従事者だけでなく、全ての人々の健康と福祉の向上に貢献することを目指しています。
ニコン ヘルスケア事業について
ヘルスケア事業部は2017年、医療機器を扱う「メディカル事業推進本部」と生物顕微鏡などを扱う「マイクロスコープ・ソリューション事業部」を統合することで誕生しました。現在、「ライフサイエンスソリューション」、「アイケアソリューション」、「細胞受託生産ソリューション」の3つのソリューションを展開しています。
「ライフサイエンスソリューション」は、バイオサイエンスや医学の分野において、生細胞の構造や動きをナノスケールで観察する超解像顕微鏡その他で新たな知見の獲得などをサポート。また再生医療・創薬の分野では、細胞の品質を評価する細胞培養観察装置や細胞関連のサービスを通じて治療や新薬開発に貢献しています。
「アイケアソリューション」は、超広角走査型レーザー検眼鏡による高精細な網膜画像の取得を支援し、眼科領域における疾病の早期発見と治療に貢献します。さらに糖尿病などの内科領域の全身疾患の早期発見と治療にも寄与しています。
「細胞受託生産ソリューション」は、細胞生産プロセスをサポート。製造設備・オペレーション・品質管理システムで、製薬会社、バイオベンチャー分野に再生医療用細胞、遺伝子治療用細胞の受託開発・受託生産を提供し、再生医療の発展に貢献しています。
ニコンのヘルスケア事業は、イノベーションを通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献しています。
関連リンク
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