ニコン製のLED光源に対応した実体顕微鏡用蛍光照明装置を発表LED光源の活用で、再生医療・創薬研究に適した蛍光観察環境を提供

2024年10月30日

蛍光照明装置とニコン製LED光源を取付けた実体顕微鏡SMZ25

株式会社ニコン(以下、ニコン)は、LED光源を取り付け可能な実体顕微鏡用の蛍光照明装置を開発し、子会社の株式会社ニコンソリューションズを通じて10月31日より販売開始いたします。

本製品を使用することでニコン製LED光源を実体顕微鏡にファイバーレスで取り付けることができます。

大型サンプルの観察には実体顕微鏡が適していますが、詳細な内部構造を観察するために、GFPなどの蛍光たんぱく質や蛍光色素で標的を染色して観察する“蛍光観察”という手法が用いられます。蛍光照明装置は、蛍光観察のために光源からの光を対物レンズに導入するための装置です。

LED光源は従来の水銀光源に比べ、長時間の観察でも光源立ち上げ時から観察時間を通じて安定した光量を保つことができます。そのため、再生医療やがん研究、神経疾患の研究など、大型サンプルの観察が重要な分野で、安定した蛍光観察環境を提供することで、研究の再現性の向上に寄与します。

特に、再生医療や創薬研究の領域では細胞や組織の変化を長期間にわたってモニタリングする必要があり、低光毒性のLED光源による観察手法が業界標準となっています。ニコンの新型蛍光照明装置は、こうしたニーズに応えることで、さらなる科学の発展に寄与していきます。

発売概要

商品名 実体顕微鏡用蛍光照明装置
「P2-EFLM2」「P2-EFLI2」「P-EFL2」
販売時期 2024年10月31日
実体顕微鏡用蛍光照明装置:P2-EFLM2

実体顕微鏡観察でLED光源を活用するメリット

新しく発売する実体顕微鏡用蛍光照明装置は、さまざまな研究分野での蛍光観察作業をより安定して行うために設計されています。

・安定した光量と、柔軟な光量調整で再現性の高い観察を実現

LED光源は、スイッチオンから観察終了まで照射強度が安定しているため、観察期間を通じて一定の照射強度を保ちながら観察や計測を行うことができます。さらに、この特性により、観察する日ごとのばらつきも小さくなり、長期間にわたる観察や実験において再現性の高い結果を得ることができます。

・最小限の光毒性で信頼性の高い観察を実現

細胞は強い光によりダメージを受けることがあります。LED照明は、従来の水銀光源と比較して、紫外線や赤外線の放出が少なく、調光により必要最小限の光量にすることで、実験サンプルへのダメージや蛍光色素の退色、熱による影響を抑えることができます。これにより、実体顕微鏡観察に用いられる大型の実験サンプル本来の現象をより外部要因の小さい環境で評価することが可能となり、研究結果の再現性を一層高めることができます。

緑色の蛍光タンパク質を発現させたゼブラフィッシュ

画像のご協力:
理化学研究所脳神経科学研究センター知覚運動統合研究チーム
久保郁先生、柿沼久哉先生ご提供(蛍光観察と明視野観察の組合せ)

【ニコン 常務執行役員 ヘルスケア事業部長 山口達也のコメント】

ニコンは、高度な生命科学分野における観察精度をさらに向上させるため、新型の実体顕微鏡用LED蛍光照明装置を発売します。この新製品は、再生医療や創薬研究などの分野で、研究者のニーズに応え、高品質で安定した照明環境を提供し、作業効率を大幅に向上させることを目的に開発されました。

私たちは、研究者や医療従事者の皆様が抱える課題を真摯に受け止め、その解決策を提供するためにフィードバックを取り入れ、製品の開発に努めてきました。特に、がん研究、神経疾患、再生医療といった分野でご活用いただくことで、大型サンプルの観察がこれまで以上に高精度で正確に行える作業環境が提供できることを期待しています。

ニコンは、今後も研究者や医療従事者の皆様と共に課題解決に貢献し、革新的な研究成果をサポートし続けます。

本製品の使用により取付可能な「蛍光LED照明システム D-LEDI」

今回発表した蛍光照明装置を活用することで取り付けられるニコン製LED光源「D-LEDI」は、顕微鏡を用いた蛍光観察において高い性能を発揮する製品です。

この製品は、385nm、475nm、550nm、621nmの4つの異なる波長のLEDを搭載し、専用コントローラーを通じて、全波長を同時に操作したり、特定の波長を選択したりすることが可能です。さらに、ニコンの「NIS-Elements」ソフトウェアを用いることで複数の波長の明るさを簡単に調整でき、タイムラプス撮影にも対応しています。自然冷却方式を採用しているため、振動が少なく、特に高倍率観察において安定性を保ちながら高精度なデータを取得できます。内蔵のLEDは、約20,000時間の長寿命設計で、水銀ランプのように頻繁なランプ交換が不要となります。さらに出荷時に光軸調整されているため、使用する初期から手間がかからないユーザーフレンドリーな設計となっています。

ニコン ヘルスケア事業について

ヘルスケア事業部は2017年、医療機器を扱う「メディカル事業推進本部」と生物顕微鏡などを扱う「マイクロスコープ・ソリューション事業部」を統合することで誕生しました。現在、「ライフサイエンスソリューション」、「アイケアソリューション」、「細胞受託生産ソリューション」の3つのソリューションを展開しています。

ライフサイエンスソリューション」は、バイオサイエンスや医学の分野において、生細胞の構造や動きをナノスケールで観察する超解像顕微鏡その他で新たな知見の獲得などをサポート。また再生医療・創薬の分野では、細胞の品質を評価する細胞培養観察装置や細胞関連のサービスを通じて治療や新薬開発に貢献しています。

アイケアソリューション」は、超広角走査型レーザー検眼鏡による高精細な網膜画像の取得を支援し、眼科領域における疾病の早期発見と治療に貢献します。さらに糖尿病などの内科領域の全身疾患の早期発見と治療にも寄与しています。

細胞受託生産ソリューション」は、細胞生産プロセスをサポート。製造設備・オペレーション・品質管理システムで、製薬会社、バイオベンチャー分野に再生医療用細胞、遺伝子治療用細胞の受託開発・受託生産を提供し、再生医療の発展に貢献しています。

ニコンのヘルスケア事業は、イノベーションを通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献しています。

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