ニコン、医療用デジタルイメージングマイクロスコープ「ECLIPSE Ui Ver 1.4」をリリース最大10枚の標本同時比較と遠隔地からの操作機能の拡充で病理診断の効率化をサポート

2025年3月18日

株式会社ニコン(以下、ニコン)は、デジタルイメージングマイクロスコープ「ECLIPSE Ui(エクリプス ユーアイ)」※1のソフトウェアアップデートとなるバージョン 1.4を開発し、子会社の株式会社ニコンソリューションズより販売されるECLIPSE Uiにおいて、3月18日から順次、本ソフトウェアが搭載されます。

医療機器であるECLIPSE Uiは、接眼レンズを排除したユニークなデザインと、ネットワーク経由での遠隔地からの操作・閲覧が可能な機能により、病理診断のワークフローの効率化をサポートしてきました。

今回のソフトウェアアップデートでは、病理診断のワークフローを効率化する新機能として、連続して20枚までの標本画像を記録し、一画面に最大10枚の標本画像を比較観察可能な「タイルビュー」および「レイヤービュー」を新たに搭載。また、遠隔地とのデータ供覧をサポートする「リモートモード」の機能強化も実現し、遠隔地の医師やチームとのデータ共有がより効率的でスムーズになります。これにより、病理医や臨床現場におけるさらなる負荷軽減に寄与します。

開発の背景

国内の臨床検査市場では、病理医不足が課題となっています。2024年10月時点で、日本国内の病理専門医数はわずか2,841名※2にとどまり、1人当たりの診断負荷が高い状況です。このため、限られたリソースで効率的かつ正確な診断を実現する仕組みが求められています。

がんなどの病気を診断する病理検査では、組織の形を観察する「HE染色」や、抗原抗体反応を用いた「免疫染色」、化学反応を用いた「特殊染色」など様々な染色方法が用いられます。

従前は、同じ組織から薄切した複数の標本に、それぞれ異なる染色を施して観察する必要がありました。1つの診断をするために複数の染色が必要なケースも多く、それぞれの標本で同じ場所を探し出す作業を繰り返す必要があるため、病理医にとって負担となっていました。

こうした課題に対応するため、ニコンはデジタル顕微鏡「ECLIPSE Ui」において、「アライメントモード」を開発し、段階的に機能を実装してきました。バージョン1.4では、連続して20枚までの標本画像を記録し、一画面に最大10枚の画像を表示する「タイルビュー」と、同一地点で異なる染色方法の画像を順に切り替えて表示する「レイヤービュー」という2つの新機能を搭載。これにより、画像比較が容易になり、標本の入れ替えの手間を省くことができるようになりました。

また、臨床現場では病理医不足に伴う地域格差や高齢化、長時間の観察による疲労、難易度の高い症例への対応といった課題があります。こうした背景を踏まえ、リモート診断の効率性を高め、連携作業の円滑化につながる新機能も搭載しました。

ニコンでは顕微鏡技術とデジタル技術を融合した診断支援ツールとして「ECLIPSE Ui Ver1.4」を開発しました。これにより、限られた医療リソースの中で迅速かつ正確に診断することに寄与し、病理診断の課題解決と医療現場全体の効率化をサポートします。

  1. ※1医療機器届出番号:13B2X10606000001 (販売名:「デジタルイメージングマイクロスコープ Ui」)
  2. ※2一般社団法人日本病理学会 病理専門医一覧 https://pathology.or.jp/senmoni/board-certified.html[別窓で遷移します]

発売概要

商品名 デジタルイメージングマイクロスコープ「ECLIPSE Ui」
バージョン 1.4
提供開始時期 2025年3月18日より順次
主なアップデート事項
  • アライメントモード:タイルビュー・レイヤービュー
  • リモートモードの機能強化
  • リピート動作時の移動量カスタマイズ

主なアップデートの特長

1. 2つの表示モードで画像比較を容易に、標本間の部位確認の手間を削減し診断効率向上をサポート

新たに追加された「タイルビュー」および「レイヤービュー」の2つの表示モードにより、連続して20枚までの標本画像を記録し、一画面に最大10枚の標本画像を同時に比較観察できます。タイルビューでは、同一地点を撮影した複数画像を並列表示することで、各染色像の違いを容易に比較できます。レイヤービューでは、同一地点の複数画像を瞬時に切り替えて表示することで、HE染色による組織の形態と、免疫染色により可視化された抗原の局在を比較しながら観察できます。これにより、従来の診断作業で課題となっていた標本ごとに同じ部位を探し出す手間を軽減し、診断効率の向上をサポートします。

2. 遠隔地からの操作機能を強化し、遠隔地間の診断補助を効率化

Ver 1.2、1.3で導入された機能を、遠隔地からの診断時でも使用できるようになりました。遠隔地の医師やチームとのデータ共有がより効率的かつスムーズになります。

主な機能は以下の通りです:

  • 観察済み領域の軌跡表示:マクロ画像上に確認済みの視野を可視化し、見逃し防止をサポート
  • 移動量のカスタマイズ:観察条件に応じて系統的な検査が可能
  • 操作性の向上:
    • キーボードショートカットの拡充
    • オートフォーカス後の高画質表示への自動復帰
    • デジタルズーム倍率の表示変更
    • ミクロ画像の90度単位での回転表示

これらの改良により、リモート診断の効率性を向上させ、遠隔地との連携作業を円滑化します。

【ニコン 常務執行役員 ヘルスケア事業部長 山口達也のコメント】

この度、私たちニコンは、医療現場におけるDXをさらに推進するため、ECLIPSE UiのVer 1.4をリリースいたしました。この製品は、医療従事者の皆様から寄せられた多くのご意見をもとに、診断業務の現場で直面する具体的な課題を解決するべく設計されています。

特に、今回新たに搭載された「タイルビュー」および「レイヤービュー」機能は、複数標本の比較観察を効率的に行えるものです。これにより、HE染色と免疫染色や特殊染色の標本を迅速に照合でき、診断作業における時間と労力の削減に貢献することを目指しています。また、リモートモードの強化により、離れた場所にいる医療従事者同士がリアルタイムでデータを共有し、診断の連携をより効率的に行える環境を実現しました。これらの新機能は、病理医や検査技師の方々の日々の作業負担を軽減し、より迅速な診断をサポートすることを目指しています。

さらに、今回のアップデートでは、診断業務をより柔軟に支援するための細部にわたる改良を加えました。例えば、観察箇所の移動量をカスタマイズできる新機能やミクロ画像の回転表示機能の追加は、医療現場における自由度と効率性の向上が期待できます。

私たちは、製品や技術の進化が、単なる業務効率化を超え、患者様一人ひとりの健康や生活の質(QOL)の向上に繋がると信じています。これからも医療現場の声に真摯に耳を傾け、ニコンならではの技術力を最大限に活かし、医療従事者の皆様とともに未来を切り拓いてまいります。

ニコン ヘルスケア事業について

ヘルスケア事業部は2017年、医療機器を扱う「メディカル事業推進本部」と生物顕微鏡などを扱う「マイクロスコープ・ソリューション事業部」を統合することで誕生しました。現在、「ライフサイエンスソリューション」、「アイケアソリューション」、「細胞受託生産ソリューション」の3つのソリューションを展開しています。

ライフサイエンスソリューション」は、バイオサイエンスや医学の分野において、生細胞の構造や動きをナノスケールで観察する超解像顕微鏡その他で新たな知見の獲得などをサポート。また再生医療・創薬の分野では、細胞の品質を評価する細胞培養観察装置や細胞関連のサービスを通じて治療や新薬開発に貢献しています。

アイケアソリューション」は、超広角走査型レーザー検眼鏡による高精細な網膜画像の取得を支援し、眼科領域における疾病の早期発見と治療に貢献します。さらに糖尿病などの内科領域の全身疾患の早期発見と治療にも寄与しています。

細胞受託生産ソリューション」は、細胞生産プロセスをサポート。製造設備・オペレーション・品質管理システムで、製薬会社、バイオベンチャー分野に再生医療用細胞、遺伝子治療用細胞の受託開発・受託生産を提供し、再生医療の発展に貢献しています。

ニコンのヘルスケア事業は、イノベーションを通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献しています。

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