薬物動態
やくぶつどうたい
pharmacokinetics

薬が体内に投与されてから排出されるまでの経時的変化のことを指します。薬が、吸収され、体内に分布し、肝臓などにおいて酵素などにより代謝され、別の化合物に変化し、腎臓などから排出されます。この過程で吸収された薬が体内の各組織にどのくらい分布しているか、また、薬の濃度等の変化を追うことにより、薬の効果やその持続時間、蓄積性や安全性を評価します。吸収absorption、分布distribution、代謝metabolism、排泄excretionの4つの頭文字をとってADMEと呼ばれます。
薬物が体内のどこにどれだけあるか調べることをPK(Pharmacokinetics)、体内の薬の濃度と効果の関係を調べることをPD(Pharmacodynamics)と言います。これらを動物で調べることにより、ヒトで何時間おきに何回、どのタイミングで、1回にどのくらいの量の薬を投与すると安全かつ必要な薬効を得られるかを予測します。
前臨床試験における薬物動態評価は主に実験動物を用いて評価されています。しかし、動物とヒトとの種差の違いにより、ヒトでの予測性が十分ではないことが課題となっています。近年、マイクロ流体デバイス技術の進歩により、体内用の微小環境を模倣した臓器レベルの細胞機能を再現できる臓器チップ(オーガンチップ、OoC)の技術の応用が期待されています。
たとえば、結腸がん細胞(Caco2)などの腸管細胞を膜組織上部で増殖させ、ヒト内皮血管細胞などを膜組織下部で培養することにより、腸の上皮バリアをモデリングすることができます。このモデルを使うことにより、上皮-内皮間の相互作用や細孔膜組織を通した傍分泌シグナル伝達、チャンネル内の培地の灌流による栄養素-老廃物の交換、柔軟な膜組織を一方向に伸長することによる腸の蠕動を模倣した機械的応力の伝達などを、再現できます。このような臓器チップ(オーガンチップ、OoC)は薬物動態試験に応用が期待されています。

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