神経堤細胞
しんけいていさいぼう
neural crest cell
神経堤(NC: Neural Crest)は、一過性に現れる細胞群ですが、様々な細胞種に分化するため第四の胚葉とも言われています。脊椎動物では、神経堤細胞(NCC: Neural Crest Cell)神経管の背側隆起から剥離し、その後、神経形成中に発生中の胚内で広範囲に移動します[1][2][3]。頭蓋神経堤細胞は咽頭弓に移動し、頭蓋顔面の大部分を構成し、最終的に歯、軟骨、頭蓋顔面骨、および結合組織を形成する間葉組織になります。また、脳神経節にも分化します[4][5][6]。心臓神経堤細胞は心臓の発達に寄与し、迷走神経神経堤細胞は腸の腸神経節の発達に寄与し、体幹神経堤細胞は背側および側方経路に沿って移動します。
メラニン細胞、交感神経節細胞、副腎クロム親和性細胞にも分化します[7]。神経堤細胞は一時的に発生する細胞集団であるため、発生中の胚から回収するのは困難です。しかし、近年、マウスやヒトの多能性幹細胞から神経堤への分化誘導法の開発が報告[8][9]されたことにより、神経堤についての研究や神経堤を用いた薬効評価法の開発[10]が発展してきています。
参考文献
[1] Dev Biol. 1993; 159 (1): 1-11.
[2] Cell Stem Cell. 2008; 2(4): 392-403.
[3] Biochem Biophys Res Commun. 2009; 379(4): 1114-9.
[4] Nat Rev Neurosci. 2003; 4(10): 806-18.
[5] J Anat. 2005; 207(5): 575-601.
[6] Dev Biol. 2010; 344(2): 543-54.
[7] Multipotentiality of the neural crest. 2003.
[8] Oral Diseases. 2017; 23: 559–565
[9] Methods Mol Biol. 2019;1965: 35-48
[10] Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2011; 108: 19240-19245.