由来種 :ヒト
器官・組織・細胞(株)名:RPE-1 細胞
染色・ラベル方法等 :緑:微小管(α-tubulin)
赤:動原体(mScarlet-Dsn1)
青:DNA(DAPI)
観察手法 :蛍光、共焦点
対物レンズ :Plan Apo lambda 100×/1.45 NA
作品画像取得年 :2021
竹之下 憂祐
染色体上のセントロメア領域につくられる巨大なタンパク質複合体で、細胞分裂の際に、染色体を引っ張る糸(紡錘体微小管)と結合する。このことにより染色体と紡錘体微小管とがつながり、染色体分配が可能になる。
細胞分裂期に構成される紡錘状の構造体。主に微小管からつくられ、染色体上の動原体をとらえ両極に引っ張る機能を持つ。
細胞内に形成される直径約25nmの管状の構造体。主にチューブリンと呼ばれるタンパク質からつくられる。細胞分裂の際には、染色体分配に必須な装置である紡錘体を形成する。
動原体の構成因子。セントロメアDNAと結合する機能と、Ndc80複合体と結合する機能とをもつため、染色体と紡錘体微小管とをつなぐことができる。
動原体が構成される染色体上の特定の領域。細胞分裂期にくびれた構造を形成し、動原体を介して紡錘体微小管と結合する。
細胞内には、遺伝情報を含んだ染色体が複数存在する。染色体は、1 つの親細胞が2 つの娘細胞に分裂する前に2 セットにコピーされる。このコピーされた染色体を、細胞が分裂する時に次世代の細胞へ受け渡すことを染色体分配という。
動原体の構成因子で、4 種類のタンパク質から構成される。酵母からヒトまで機能的にも構造的にも保存され、紡錘体微小管と直接結合する機能をもつ。
動原体の構成因子。セントロメア領域とMis12複合体の両方に結合することから、CENP-Tと同様に染色体と紡錘体微小管とをつなぐために必須と考えられていた。しかし最近の研究で、CENP-C の染色体と紡錘体微小管とをつなぐ機能は、染色体分配に必須ではないことが示された。
ゲノムDNA 上の特定の塩基配列を狙って改変する技術。この技術を応用し、外来の遺伝子と元々のゲノム配列とを入れ替えることで、変異タンパク質を発現する細胞を作成できる。
動原体の構成因子で、4種類のタンパク質から構成される。Ndc80複合体とサブ複合体を形成し、CENP-TやCENP-Cに結合することで、Ndc80複合体との結合を仲介する。
Q1CENP-T が2 セットのNdc80 複合体と結合することが染色体分配に重要という 今回の成果ですが、CENP-C の役割はなんでしょうか? またCENP-T 経路を断ち切ると染色体分配は行われないでしょうか?
CENP-Cを欠損した細胞は死んでしまいますが、細胞の生存に必須なCENP-Cの役割は明らかになっていません。
CENP-Cには、既に細胞の生存に必須でないことが分かっているNdc80 複合体のリクルートに関わる領域だけでなく、他の動原体構成因子と結合する領域があるので、この領域が細胞の生存に必須なCENP-C の役割を担っている可能性があります。
CENP-T 経路を断ち切ると、染色体分配が途中で停止し、細胞は死んでしまいます。
Q2100種類以上のタンパク質が結合している巨大なprotein complexである動原体には、CENP-T, CENP-Cのように類似の機能をもつと考えられているタンパク質は多くあるのでしょうか?
またなぜ動原体にはこれだけ多くのタンパク質が結合していると考えられるのでしょうか?
動原体の構成因子には、互いに類似の機能を持つタンパク質がいくつか知られていて、これらのタンパク質の中には、お互いの機能をほぼ完全に補うことができるものもあります。
動原体の染色体と紡錘体微小管とを正しくつなぐという機能は単純そうに思えますが、実際は複雑です。
ただつなぐだけではなく、紡錘体微小管との間違った結合を修正したり、動原体の構造を安定的に維持したりなど、動原体は複数の機能を緻密に制御しています。
これらの複雑な機能の制御のために、多くのタンパク質が動原体には必要だと考えられます。
Q3染色体分配の異常による疾患で、CENP-T 経路が関与するような知見は得られているのでしょうか?
小頭症と低身長の症状を示す患者さんのゲノム解析を行ったところ、CENP-T に変異が見つかったという報告があります。
詳細な解析は行われていませんが、この患者さんの症状の原因は、CENP-T の変異による部分的な染色体分配異常の可能性があるようです。
ただ、このような報告は稀なので、ほとんどの場合、CENP-T に変異が入ると染色体分配異常により細胞が死んでしまうのではないかと考えています。