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再生医療における細胞培養の役割

公開:2020.01.20

再生医療は世界各国で臨床に用いられ始めている注目の治療法であり、産業化が加速しています。ここでは、再生医療における細胞培養の役割と、再生医療や創薬スクリーニングなどに用いられる各種幹細胞の活用例について、歴史とともに紹介します。

再生医療の実用化を支える細胞培養

細胞培養を行う様子

再生医療とは、細胞を用いて身体の構造や機能を再建、修復や形成させたり、疾病の治療や予防したりすることを目的とした医療です。細胞治療とも言われます。再生医療に用いられる細胞の多くは、患者本人または健常人ドナーなどの他人の細胞や組織を体の外に取り出したのち、培養などの加工が行われます。

細胞培養とは、生体組織から一部を取り出し、細胞を培養容器内で維持・増殖させることです。組織の一部や組織から細胞を分離し、培地中で目的に応じて性質を維持させたり、分裂増殖させたり、分化させるために行います。

細胞は、器官・組織から取り出された後も主な特性が維持されるように、生体組織において血液中を流れながら存在していた細胞は浮遊系細胞、器官・組織内で細胞同士あるいは細胞外マトリクスと接触しながら存在していた細胞は接着系細胞として培養されます。

培地、培養容器や培養手法などの細胞培養技術の発展により、生体内における細胞や器官の特性、機能を生体外で再現させることができるようになりました。培養細胞は生物学や分子生物学などの基礎研究はもちろん、薬を新しく作るための研究や、さらには再生医療に利用されています。

再生医療に用いられる各種幹細胞(ステムセル)の歴史と活用例

古くから身体には再生能力があることが知られていました。しかし、イモリの尻尾は再生しても、ヒトの指は再生しません。なぜヒトでは再生しないのか?という疑問を解決すべく、これまで様々な研究が行われてきました。

再生医療の実例的な研究例の中では、1952年に報告されたモルモットの皮膚細胞の移植が初めてと言えるのではないでしょうか[1]。1970年代に皮膚の基底層の幹細胞や娘細胞を含むケラチノサイトの培養が成功したことを契機に、再生医療の新しい時代が幕を開けました。今では、実際の医療に用いられるまで再生医療の研究が発達しました。やけどを負った患者さんに、やけどを負ってない皮膚の一部を採取してケラチノサイトを取り出して増やし、皮膚に分化させて移植する治療などはその一例です[2]

組織幹細胞

ケラチノサイトのように、組織の中にあり、分裂して自分と同じ細胞を作ることができる自己複製能力(self-renewal)をもちつつ、特定の方向にのみ分化することができる細胞を組織幹細胞と言います。現在治療に用いられている再生医療等製品の多くは、このような幹細胞を体の外で増やした(細胞培養)ものです。

MSC(間葉系幹細胞)

1970年にモルモットの骨髄において、様々な細胞に分化する能力(多分化能/multipotent)を持つ細胞が発見されました[3]。この細胞は、間葉系幹細胞と言われ、1999年に、ヒトの骨髄にも存在することが確認されました[4]。現在では、骨髄だけでなく、脂肪組織や臍帯など様々な組織に存在していることがわかっています。

日本では、脊髄損傷や移植片対宿主病を対象とした間葉系幹細胞由来の再生医療等製品が治療に適用されています。海外でも数多くの間葉系幹細胞を用いた臨床試験が行われていたり、製品として承認されていたりします。

ES細胞(胚性幹細胞/ESC)

1981年に、自己複製能力と、体を構成する各細胞へと変化する分化能力(多能性/pluripotent)を持つマウスES細胞が樹立され[5]、1998年には世界初のヒトES細胞が樹立されました[6]。その後、様々な細胞に分化させる研究開発が加速していきました。ES細胞から神経を保護する支持細胞であるオリゴデンドロサイトを作り、脊髄損傷の患者に移植する臨床試験が2010年に開始されています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞/iPSC)

2007年に、生きているヒトの体の分化した組織の細胞から、ES細胞と同じような能力を持つiPS細胞が樹立されました[7]。iPS細胞を使うことにより、再生医療を行うために必要な多能性幹細胞を自らの体の細胞から作ることができ、移植の際に問題となる免疫拒絶免疫のリスクを回避できます。また、この発明により、従来は研究に用いることができなかった患者さんの心筋細胞や神経細胞を作り出すことができ、病気のモデルとなる細胞をシャーレの中に再現できるようになりました。各国で、様々な疾患iPS細胞が樹立され、疾患モデル細胞に分化させて疾患研究や候補薬スクリーニング、あるいは、薬の副作用の検証に利用されつつあります。これまでは不可能であった研究開発が進められるようになったことから、新たな治療薬の開発の道が拓かれています。

このように様々な細胞の選択肢が増え、また細胞培養の知見が蓄積され、産官学が連携を取り始めたことにより、品質・コスト面の改善も含め産業化が一気に進んでいます。特に細胞培養の技術は、再生医療の産業化を目指す上では大変重要な役割を担っています。

    参考文献

    [1] Br J Plast Surg. 1952; 5: 25-36.

    [2] Cell. 1975; 6: 331-43

    [3] Cell Tissue Kinet. 1970; 3(4): 393-403.

    [4] Science. 1999; 284(5411): 143-7

    [5] Nature. 1981; 292: 154–6.

    [6] Science. 1998; 282(5391): 1145-7.

    [7] Cell. 2007; 131(5): 861-72.

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