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細胞培養における観察の対象と判断

公開:2020.03.11

細胞培養セルカルチャー)の基本的な培養工程を行うためには、細胞の観察がとても重要です。各ステップで、細胞を観察し、細胞の状態を判断し、次の工程を決めます。

通常、細胞の品質を確定するためには、細胞を固定して免疫染色を行い、マーカータンパク質の発現の同定をする、あるいは、細胞からタンパク質や遺伝子を抽出してプロフィール解析をするなどの検査を行います。しかし、これらの検査を行うと、品質が良いと判断できても、品質が良かったと判断された細胞を使用することはできません。細胞を殺さずに次の工程に培養細胞を使用するためには、顕微鏡を用いて生きたまま細胞を観察し、使用する目的に適する細胞であることを確認します。ここでは、まず、細胞が増えていることを観察するポイントについて説明します。

細胞が増えていることを確認する際のポイント

培養細胞を利用する際に重要なことは、健康な細胞を用いることです。そのためには、細胞の状態を正しく判断することが必要です。死にそうな細胞に薬剤を添加した場合と、健康な細胞に薬剤を添加した場合とでは結果は異なります。再現性ある結果を得るためには、健康な細胞を準備することが課題となります。

健康な細胞とは、どのように判断すればいいのでしょうか?最も簡単な指標は、細胞が増えていることです。では、細胞を分散して細胞数を計測することなく、細胞が増えているかどうか、どのように判断すればいいのでしょう?

一般的には位相差顕微鏡を用いた目視による観察が最も広く使われています。

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位相差観察とは

無色透明の細胞は、そのままではコントラストがほとんどなく、はっきりと形態を観察することができません。光が細胞を透過したときの屈折率の違いによりコントラストができ、細胞の形態や核を認識できるようになります。細胞の培養を開始したら、ほぼ毎日、顕微鏡下に観察します。

位相リングがある位相差画像(左)、位相リングがない位相差画像(右)

位相リングがある位相差画像(左)、位相リングがない位相差画像(右)

さて、細胞が増えているかどうかは、どう判断すればいいのでしょう?

簡単です。昨日観察した時よりも細胞が多くなっていれば、細胞が増えているのです。

まず、培養容器の全体を観察します。接着細胞であれば培養容器の底面をどのくらい細胞が占めているか、を評価します。あるいは、細胞がない隙間がどのくらい昨日より減っているか、を評価します。忙しい日々を過ごしていて、昨日の様子を覚えてられないかもしません。昨日のことを忘れてしまってもいいように、顕微鏡画像を保存しておくのがいいでしょう。昨日の画像を見て、今日の細胞の様子と比較することにより、細胞が増えていることを確認できます。

細胞の様子 位相差画像(上)、マスク画像(下)

細胞の様子 位相差画像(上)マスク画像(下)

もし、細胞が昨日と比べて増えていない、あるいは、減っている時はどう判断したらいいのでしょうか?原因を考えて、それに対処する必要があります。

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①細菌・酵母やカビ(真菌)に感染している

細菌や酵母が感染してしまっている場合には、通常よりも培地の色が黄色く変化している、さらには、濁るなどが見られます。顕微鏡で観察すると、小さな粒子がたくさん浮遊しています。拡大してみると細菌が動いている様子が見える場合もあります。カビの場合は、見逃してしまうこともあります。カビが増え始めの時には、培地の色は通常通りで、細胞にもそれほどの異常は見られません。しかし、容器全体を弱拡大でまんべんなく観察し、羽のように菌糸が放射状に揺れているのが見つかれば、カビが感染している状態と言えます。その培養容器は破棄するのが望ましいです。どうしても破棄ができない場合には、細菌などを洗い流すとともに、抗生物質を添加して、培養することにより感染を除去することが可能な時もあります。しかし、細胞や培養条件によって洗浄や抗生物質によって細胞死に至る、あるいは、形質が変化することもあります。一方で、感染の原因も探る必要があります。

②培養環境の不良

CO2インキュベータの不具合により、培養環境が不良であった場合、細胞が増えない、あるいは、細胞死に至る場合があります。培地の色が赤くなっている場合には、CO2インキュベータの不具合である可能性があります。CO2ボンベが空でCO2供給されていなかった、湿度を保つための水が不足している、また、温度が下がっていた、などが挙げられます。短時間であれば、細胞が回復する場合もありますが、形質が変化することも考えられますので、細胞は破棄することが望ましいでしょう。

③培地や容器の不良

細菌・酵母やカビが感染しておらず、CO2インキュベータの不具合でなければ、最後に残るのは、培地や容器の不良が考えられます。培地にサプリメントを入れ忘れたことが考えられます。接着細胞の場合は、培養容器に適切に接着因子をコーティングしていないなどの原因も考えられます。そのような場合、培地交換をする、あるいは、接着因子をコーティングした容器に移し替える、などの作業により回復できる可能性があります。

上記の問題がなく、すくすくと細胞数が増えていれば、対数増殖期の細胞では分裂像がよく観察され、容器底面における細胞が占める面積は増えていきます。しかし、容器全体を細胞が占めてしまうコンフルエントの状態になってしまうと、細胞の増殖は抑制されていきます。

がん細胞の場合、細胞増殖が抑制されずに重層化する株もありますが、細胞が増えすぎて栄養が足りなくなり、一気に死滅する場合もあります。ヒト正常上皮細胞は、一度コンフルエントまで増殖させてしまうと、その次に継代した際には増殖能を失う、あるいは、接着さえしないこともあります。コンフルエントな状態になる前に継代が必要ですので、細胞の増えている様子を観察することはとても重要です。

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